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メキシコ最北端の街、ティフアナに立つ国境の柵
足りない「合法労働者」
トランプ米大統領は国境に壁を作るつもりだが、実行するには
多くの障壁がある。
その最たるものは、就労許可を持たない労働者を使わずに
建てることの難しさだろう。
◆事業の延期相次ぐ
国境付近の地域ではすでに、住宅や工場を建設する人手不足で
賃金が上昇し始め、プロジェクトの延期が相次いでいる。
「直ちに国境の壁を建設する」という大統領の計画は
数万人とはいわないまでも数千人を雇用できるプロジェクトを
請け負える合法的な業者を必要とする。
しかし、テキサス州オースティンの労働者支援グループ
ワーカーズ・ディフェンス・プロジェクトによれば
同州の建設労働者の半分近くは就労許可を持たない。
全米では14%が不法就労者だという。
ヒューストンの建設業者マレク・ブラザーズの
マレク最高経営責任者(CEO)は
「大統領がテキサスで合法的な労働者だけで壁を作ろうとすれば
非常に苦労するだろう。合法的な労働者はひどく不足している」
と話した。
2000マイル(約3200キロメートル)近い国境線に
壁を作るには、最大で250億ドル(約2兆8715億円)が
かかるとの推計もあり、大恐慌時代のフーバー・ダム以来の
大規模な公共事業の一つになる。
トランプ大統領は5000億ドルを超える巨額のインフラ投資で
雇用を創出すると約束している。
しかし険しい山や谷、砂丘が連なる奥地に壁を建築するには
まず、そこに行き着くための道路や一時的なコンクリート工場を
建設する必要があり、現実面で数々の障壁が行く手を阻む。
米国建設業協会のチーフエコノミスト、ケン・シモンソン氏は
「全米の建設会社が人手の確保が難しいと言っている。
政府プロジェクトで働ける労働者を確保し、その労働者を
こうした奥地に連れて行くことを含め、実行するための課題は多い」
と述べた。
企業は利益拡大と同時に大統領に近づこうとして壁建設の
仕事に飛びつくかもしれない。
そして報酬を増やせば労働者も見つかるだろう。
米国建設業協会によれば、建設業界の平均時給は2016年に
28ドル42セントと前年から3%増え、09年以降で
最大の伸びを記録した。
シモンソン氏は具体的な金額は示さなかったが、不法労働者の
時給はもっと低いと指摘した。
テキサス州の建設業者はすでに、高賃金を提供する原油や
天然ガスの生産業者との厳しい競争にさらされている。
労働者不足は深刻で、テキサス州に拠点を置く
アストロ・シート・メタルなどの企業は熟練労働者を
雇う代わりに未経験者を一から教育している。
8月の米国建設業協会の調査によれば、米国では建設会社の
約3分の2が人材確保に苦戦しているという。
◆他の産業にも影響
不動産調査会社メトロスタディのチーフエコノミスト
マーク・ブード氏はすでに逼迫している住宅業界についても
「労働力の大部分をメキシコ国境の壁建設などに奪われれば
労働者不足と労働コスト上昇が助長され、住宅建設コストが
さらに上昇する恐れがある」
と危惧する。
米調査会社ピュー・リサーチ・センターのデータによると
14年の米国の不法移民の数は1110万人。
米国に滞在する不法移民のうち建設業界就労者数は12年に
07年比23%減の120万人に縮小した
。ギャング団の暴力から逃れて米国にやってきた近年の
中米出身者はメキシコ人より建設分野の熟練度が低い傾向に
あることも背景にある。
壁の建設は高層ビルより複雑ではないとはいえ、セメント塗りや
ワイヤ張りなどのスキルが必要となる。
中央テキサス下請け事業者協会のエグゼクティブディレクター
ウェンディ・ランバート氏は
「いまでは屋根職人1人に対し65の常勤の職が開かれている。
大工仕事を未熟な人間がやる仕事だと考える若者が増えているが
根拠のない固定観念だ」
と懸念を示した。
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