今日の気になる情報をお届けします。

首相取り戻す宣言、石炭使用削減は困難
中国で開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で
李克強首相は開幕日の5日、政府活動報告で
「わが国に青空を取り戻す」
と表明し、相変わらず大気汚染に見舞われている
国民に期待を抱かせた。
だが研究者や環境保護活動家らは、首相の野心が
現実のものとなるのにまだ10年以上かかると予測する。
◆環境と景気の両立
李首相が活動報告を読み上げたこの日
北京の空は実際かなりきれいだった。
微風があったほか、中国メディアが「全人代ブルー」と
呼ぶ青空のおかげだ。
毎年、10日間ほどのこの全人代期間には空気の比較的
きれいな状況が続いている。
ポールソン研究所の調査担当アソシエートディレクター
アンダーズ・ホーブ氏は
「空気の質改善が続いたとしても、天候要因に加え
中国北部一帯で冬季の暖房用の石炭使用を減らすのが困難である」
ことを挙げ
「北京や他の主要都市では冬場のひどい大気汚染が続く」
との見方を示した。
環境保護団体グリーンピース東アジアは、2013年から
16年にかけての汚染減少ペースからすると、北京市民が
青空を楽しめるようになるにはあと約10年必要だと手厳しい。
問題は北京だけではない。
グリーンピースのデータによると、調査対象の366都市の
約74%は大気の質が公式基準を満たしていない。
李首相は大気汚染対策に取り組む構えだが、減速する景気の
下支えと環境保護という両立の難しい目標を同時に
追求しなければならず、状況は複雑だ。
ホーブ氏は
「大気汚染は慢性疾患などを引き起こし、膨大な経済的損失につながる。
大気汚染対策は長期的な経済発展に関わる課題だ」
と主張する。
社会的に環境問題に対する関心が高まる一方、環境規制の
違反リスクを冒す企業も多い。
中国中央テレビ(CCTV)の1月の報道によれば
500社を超える企業が規則違反で処罰された。
この背景について、北京の環境保護団体、公衆環境研究センター
(IPE)の創設者、馬軍氏は
「規則違反に伴う代償は比較的小さい。重大な環境問題が
発生しない限り経済成長目標の達成を重視する地方政府当局者が
いまだにたくさんいる」
と説明する。
グリーンピース東アジアのドン・リアンサイ氏も
「下級レベルでは環境政策の遂行にあたり
多くの抜け穴が存在する」
と話す。
◆再生エネシフトも
李首相の構想の一つには、24時間態勢の
産業公害の監視がある。
企業に明確な排出目標達成の期限を設け、期限までに目標を
達成できない企業は操業停止になる見通し。
ドン氏は
「企業の環境汚染物質の排出量について理解し、違反企業への
制裁金を引き上げることで、企業の自発的な基準達成を促すべきだ」
と提案する。
野村ホールディングスのアジア太平洋地域石油・ガス調査責任者の
ゴードン・クワン氏は
「中国では大気の品質が最大の争点になっている。昨冬の大気汚染も
ひどく、中国政府は太陽光、風力といった再生可能エネルギーによる
発電やLNG火力発電へのシフトを強く望んでいる」
と指摘する。
石炭は現在も中国の主要なエネルギー源で、16年の中国の
全エネルギー消費量の約6割を占めた。
一方、中国政府は昨年には、非化石燃料の全体に占める割合は
2.3ポイント増の14.3%に上昇したと発表している。
世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国である中国は
20年までに再生可能エネルギーに2兆5000億元
(約41兆6000億円)を投じ、1300万人の
雇用創出を目指している。
ホーブ氏は
「技術の進歩により大気汚染対策は急速に進むだろうが
それでも中国が国際的な環境基準を達成するのは数年
あるいは数十年先になりそうだ」
と冷ややかに見ている。
【関連情報】
霞む北京: アンケートが語る知られざる健康被害 (環境問題)
中国汚染の真相 「水」と「空気」で崩れる中国
北京レポート 腐食する中国経済
常識ではあり得ない中国の裏側
最後まで、お読みいただきありがとうございました。次回もよろしくね!

↑ ポチっと押してネ!
この記事の著作権は、ブルームバーグに帰属します!
- 関連記事
-
- トランプ米大統領、トヨタに米工場建設を迫る (2017/03/20)
- 北京の青空は10年お預け (2017/03/19)
- ネアンデルタール人が鎮痛剤、歯石分析で検出 -② (2017/03/16)
スポンサーサイト