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EV時代到来2
ラストワンマイルが絶対に必要な世界





もう1つ重要な視点がある。

それは販売網だ。

一般的に家電品は量販店や通販で買うものだが、クルマはメーカー系
ディーラーで買うのが圧倒的主流である。

クルマの場合、メーカーは売っておしまいというわけにはいかないし
ユーザーも買っておしまいでは困る。

ディーラーはセカンドユーザー、サードユーザーに商品が渡ろうとも
そのライフタイムが終わるまで責任を持ってメインテナンスを
行わなければならない。

並行輸入だからとか、メーカーは同じでもほかの店で買ったクルマだから
という理由でメインテナンスを拒否すれば、公共の安全が脅かされる。

だからメーカーと密接に結び付いたディーラー制度によって
個別には採算が合わなかろうと、社会的責務として修理や整備を
行っていく必要があるのだ。

責任だけでなく頻度も違う。

クルマには法定点検も車検もあり、商品ライフタイムで一度も
修理、整備に入らないということは通常あり得ない。

家電品はそもそもそのライフタイムにおいて、修理が必要になる
ケースがクルマより圧倒的に少ない。

そういう頻度だから家電品は販売店と補修拠点を別に分け
運送会社のデリバリーを使って限定的な補修拠点で済ますことも
できるだろうし、その不備がクルマと同レベルで命や安全に
かかわることは通常ない。

つまりアフターサービス面で、責任から考えても頻度から考えても
クルマは販売・整備を水平分業することが難しい。

ラストワンマイルのサポート体制を築かない限り
クルマを売る責任が果たせない。


技術の肝はエンジンではない

大きな絵柄はこれまで述べてきた通りだが、エンジニアリングの領域でも
難しい部分が大いに残っている。

エンジンをモーターに置き換えれば、汎用モーターやバッテリーが
数多く存在することから水平分業が可能に思われるかもしれないが
実は自動車設計のノウハウとして最も難しいポイントはシャシーにある。

走る、曲がる、止まるという基本を自然に行うだけでも
膨大なノウハウがいる。

加えて衝突安全性能や軽量化技術、低コスト化に関して、設計だけでなく
膨大なデータと生産技術が求められる。

リーマンショックで米国ビッグ3から早期退職したエンジニアを
大量に獲得できたテスラはかなり幸運だったが、そうして多くの
エンジニアを獲得してさえ、テスラのシャシー性能は決して高いとは言えない。

具体的に言えば、挙動の情報フィードバックが希薄過ぎる。

高度に細分化されたエンジニアは、メーカーが長年積み上げてきた
自社のクルマへのビジョンと知見があるからそこで能力が発揮できるのであって
そうしたリファレンスがないところで「さあクルマを作れ」と言われても
クルマを作る基準線が保てない。

読者の中には

「そんなこだわりが時代に置いていかれる原因になる」

と考える方もいるかもしれないが、キャリアにビジョン設計の多くを
握られて、自社の製品ビジョンが十全に機能しなかった家電メーカーと
ビジョンを持って障壁を乗り越え、今なお生き残りのためのビジョンを
必死に更新し続けながら製品を作っている自動車メーカーとのどちらが
市場競争を勝ち残っているのかを一考していただきたい。


ガラケーと同じ末路をたどることはない

さて最初の三段論法に戻ろう。

「電気自動車の時代」という言葉は定義が曖昧だ。

電気自動車は米国の規制によって増えざるを得ないのは確かだ。

だが、それが内燃機関に完全に置き換わるような
ことにはまずならない。

なぜなら世界の国の中で、すべての自動車を電気に置き換えられるほど
インフラ電力に余剰がある国は1つもない。

仮に超長期的に見ればそうなるとしても
相当に時間がかかるだろう。

2つ目の「技術がコモディティ化して参入障壁が下がる」という点に
ついては、クルマ本体についてはシャシー技術がネックになり
販売やサービスの面についてはコモディティ化はしようがない。

最後に中国の時代が来るかどうか。

中国の経済成長が続けば緩やかに中国車のシェアが
上がっていくことはあるだろう。

だが、それがフィーチャーホンが中国製スマホに取って代わったような
劇的な形で、ここ10年程度の間に起きるかと言えば、それはあり得ない。


池田直渡(いけだなおと)

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。
取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)
の編集、イベント事業などを担当。
2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト
「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と
森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。


【関連情報】

モビリティー革命2030 自動車産業の破壊と創造
2020年、人工知能は車を運転するのか ~自動運転の現在・過去・未来~
伊藤元重が警告する日本の未来
世界大激変―次なる経済基調が定まった!


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