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15億人に影響、大移住の時代がやってくるのか
このまま地球温暖化が進行すると、南アジアの一部は
人が生きていけないほどの暑さに見舞われるという
研究結果が発表された。
最も深刻な影響を受けるのはインド北部、バングラデシュ
パキスタン南部。
世界人口の5分の1に相当する15億人が暮らす地域だ。
南アジアで最も貧しい地域のひとつでもあり、多くの人が
何時間も屋外での厳しい農作業に従事し、自給自足に近い
生活を送っている。
「彼らは気候変動の影響を受けやすい状況にあります」
と、今回の研究を行った米マサチューセッツ工科大学(MIT)の
環境工学教授エルフェイス・エルタヒール氏は話す。
オンライン科学誌「Science Advances」に8月2日付で発表された
論文によると、このまま炭素排出量を抑制しなかった場合
数十年以内に命の危険を伴う熱波が発生し、一帯の食料供給の
大部分を担う肥沃なインダス川、ガンジス川流域が壊滅的な被害を
受けかねないという。
ただし、2015年のパリ協定で誓約した通りに炭素排出量を削減すれば
リスクを大幅に減らすことができる。
「この地域で暮らす人々の命は、炭素排出量を削減できるか
どうかにかかっています。これは抽象概念などではありません」
とエルタヒール氏は話す。
人が生きていけない暑さとは
南アジアはすでに世界で最も暑い地域の一つだが、エルタヒール氏らは
最先端の気候モデルを使用し、南アジアの将来の温度と湿度を予測した。
米海洋大気局(NOAA)国立気象局のヒート・インデックスによると
気温34.4℃、湿度80%の場合、体感温度は約54℃となる。
何らかの方法で体を冷やさなければ極めて危険とされる温度だ。
人が生きるか死ぬかに関わる暑さの指標は、気温と湿度を組み合わせた
「湿球温度」で表すことができる。
湿球温度が35℃(たとえば気温約38℃、湿度85%)に達すると
人体に備わる冷却機構だけでは数時間しか生きられない。
今のところ、この条件を満たす気候は非常に珍しい。
(35℃より低い湿球温度でも命取りになることはある)
インドでは現在、人口の約2%が32℃に近い湿球温度に
さらされることが時折ある。
論文によれば、このまま炭素排出量を削減しなかった場合
2100年までにこの割合が約70%に上昇するという。
さらに、約2%の人は、生存の限界である湿球温度35℃に
さらされるようになる。
熱波は移住を促進する
気候と移住を専門とするカナダ、ウィルフリッド・ローリエ大学の
ロバート・マクレマン氏によれば、田舎の貧しい人々は酷暑に
対処するすべがなく、水と食料、涼しさを求めて都市に移り住む
傾向があるという。
「バングラデシュで行われたある研究は、洪水よりも酷暑による
移住の方が多くなることを示唆しています」
とマクレマン氏は言う。
酷暑より海面上昇の方がはるかに注目を集めており
多くの研究が行われているが、実際は、酷暑の方がもっと早く
大きな影響をもたらす可能性がある。
しかし
「まだ現実的な解決策は提示されていません」
2016年にオレゴン州ポートランドで開かれた会議では、米国北西部の
都市の代表者が集まり、カリフォルニア州や南西部からの
移住の増加にどう対応するかを話し合った。
講演を行ったマクレマン氏によれば、移住の理由は
暑さから逃れるためだという。
「各都市の職員たちは移住の増加を認識しており、どのように対応
すべきか頭を悩ませています」
フロリダ州をはじめとする南東部の各州でも、酷暑が
深刻化すると予想されている。
しかし、気象学者で気候の専門家でもあるミシガン大学の
リチャード・ルード氏によれば、最も危険な地域はミネソタ州から
ミシシッピ川渓谷に沿ってニューオーリンズへと至る米国の中央部だという。
「沿岸州の猛暑は海によって和らげられていますが、セントルイスや
シカゴではしばしば、高温多湿の気候が長く続くのです」
米国の気候変動による気温上昇はわずか1℃だが、すでに記録的な
熱波を何度も経験している。
このまま炭素排出量を削減しなかった場合、平均4℃以上は
気温が上昇すると予測されている。
そうなれば
「全く違う世界になるでしょう」
とルード氏は警告する。
米国ではこの20~30年間に、多くの定年退職者や仕事を持つ若者などが
北から南へと移住した。
ルード氏は、今後は南の人々が厳しい暑さから逃れるため
北への回帰が起きるだろうと述べている。
ルード氏によれば、中東やアフリカの一部ではすでに、人々が
酷暑と干ばつを理由に移住を始めているという。
【関連情報】
明快 地球温暖化 一般論
異常気象で読み解く現代史
人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか
「日本の四季」がなくなる日 連鎖する異常気象
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