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世界初の海底鉱物引き上げ、商業化の行方は…
海底に沈む金や銀、財宝を目指す冒険譚に
心を躍らせたことはないだろうか。
そんな夢物語が現実になるかもしれない。
経済産業省と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が
9月下旬、海底の鉱石を安定的に引き揚げる実験に
世界で初めて成功したと発表したのだ。
平成30年代後半の商業化を目指す。
海に囲まれ、世界有数の広さの排他的経済水域(EEZ)を持つ
日本にとって国産資源の開発は“夢”。
商業化にこぎつければ、他国との資源外交で下手に出る
必要もなくなるが、果たしてその実現性は…。
成功したのは、マグマで熱せられた海水が海底から噴き出した際
海水に含まれる金属が冷えて固まってできる「海底熱水鉱床」から
鉱石を連続して大量に引き揚げる実験だ。
鉱石には金や銅などのレアメタル(希少金属貴)、自動車など
鉄のメッキに欠かせない亜鉛などを多く含むとされる。
8月中旬から9月下旬まで、JOGMECなどが
沖縄県近海で実施した。
水深約1600メートルの鉱床に投入した掘削機で鉱石を
直径約3センチに砕き、水中ポンプで引き揚げた。
重い鉱石を海水とともに目詰まりなく吸い上げるのが課題で
実験では、期間中に数十分間にたわる連続採掘を16回実施し
計16.4トンを引き揚げた。
鉱石には7~8%程度鉱物資源が含まれているとみられる。
これまでは海底熱水鉱床から鉱石を引き揚げる手段がなく
潜水艇で試験的に採掘するしかなかった。
今回、世界に先駆けて海底鉱石の連続採掘に成功したのは
日本の企業が高い掘削技術を持つからだ。
掘削機やポンプは三菱重工業が手がけた。
海流がある中で船を停止して掘削する高い操船技術もあった。
商業化には、ポンプの大型化や掘削機の低価格化など
技術革新に取り組まなければならないが、日本は
他国より技術的に優位だ。
経産省はEEZの他海域での資源量などを調査し、30年度に
商業化できるかどうか判断する。
海底熱水鉱床は沖縄県近海のほか、小笠原諸島近海など
8カ所で確認されている。
沖縄本島から北西に約110キロの海底にある伊是名海穴の
資源量は740万トンで、国内の年間消費量と同等の亜鉛が
埋蔵されているとみられている。
また、日本のEEZは世界6位の広さで、海底熱水鉱床だけでなく
より深海には、コバルトやニッケル、白金などレアメタルを
多く含んだ岩石の集まり「コバルトリッチクラスト」
レアメタルが含まれる球状の岩石「マンガン団塊」など
有力な海底資源が存在するといわれている。
これらには、高性能モーター用磁石の原料となるレアアース(希土類)
なども含まれているとされる。
本州から約1800キロ離れた日本最東端の南鳥島周辺からは
レアアースを含む泥(レアアース泥)も発見されている。
世耕弘成経済産業相は記者会見で
「日本近海では、国内の年間消費量を上回る鉱物の存在が見込まれている。
今回の成功を踏まえて国産資源の開発を進め、わが国の鉱物資源の
安定供給体制のさらなる強化を主導したい」
と述べた。
ただ、これらの海底資源の開発を成功させるには
いくつもの壁が立ちはだかる。
まずは水深だ。
比較的浅い海底熱水鉱床でも水深700~2000メートル。
マンガン団塊やレアアース堆積物は4000~6000メートル
コバルトリッチクラストは800~2400メートルと深海の底に眠る。
採掘機器は海底熱水鉱床でも大切だが、さらに高い耐圧性や
密閉性が求められる。
また、不純物と有用鉱物を分離する「選鉱」の手法が海中鉱物と
陸上鉱物では異なるため、海中鉱物に適した選鉱方法を確立する必要がある。
国内ではほとんどの鉱山が閉鎖され、かつては鉱山とともにあった
選鉱施設がなくなったことも障害の一つだ。
「登山に例えるなら、ようやく装備が整って
登山口に立てたところ」
経産省幹部はこう打ち明ける。
すべての海底資源を有効利用できたとしても
数十年先の未来になりそうだ。
ただ、国産資源を持つことは、「生き馬の目を抜く資源外交」
(関係者)において、有力な交渉材料となる。
22年9月に尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖で海上保安庁の巡視船と
中国漁船が衝突。
海保が船長を逮捕すると、中国のレアアース対日輸出が
停滞するなど関係が悪化した。
当時、日本のメーカーは、レアアースを使わないモーターの開発を
目指したが、国産資源を持てば正面切って対抗できるようになるかもしれない。
今回の実験成功を受け、経産省幹部は
「何はともあれ、1つの壁を越えた感はある」
と安堵の表情を浮かべる。
「海底資源開発の転機になる」と太鼓判を押すのは
JOGMECの辻本崇史理事だ。
日本は資源のない国ではない。
光が届かない海の底に、日本の希望の光が
眠っていると受けとめたい。
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